2013年度 第3回講座 
2月9日<報告>

『平面から立体へ
〜身近な紙で世界が広がる〜』

紙工作

脱力系「あきらめないで、よ~いどん!」
講師:北田絵里子(絵画造形教室らぴす)


重心の移動と紙の撓みで、坂をトコトコ駆け下りる愛嬌のある工作。

3歳から小学6年生迄の生徒1クラス10名ほどが、同じ時間に活動する絵画造形教室らぴす。

〜年齢差の対応はどうするのか〜

「小さな子どもたちは、大きな子どもたちからアイデアや技術を学び、反対に大きな子どもたちは小さな子どもたちの大胆な発想に刺激を受ける。そこに異年齢が一緒に活動するメリットがあります。」

「この工作は見た目ほど簡単ではなく、紙の強さや微妙なバランスなど、試行錯誤が必要です。すぐに諦めてしまわないで、工夫を積み重ねた結果の成功は、簡単に完成してしまうキットにはない喜びがあります。」

工作のプロに見守られつつ、緩やかに励まし合って制作する。
学校とは異なる造形教室の良さでしょうか。

立体紙工作「気になる木」
講師:赤座雅子(キッズクラフト)




子どもが言葉にしにくい想いや望みなど、工作を通して表わせるようにしたいと考えています。

八つ切り大の色画用紙の上に、一本の木を立てます。

導入時には
「どんな木だったらいいかな?」
「リンゴみたいに何か実になる木だったら?」
と発案し、地面や木の色は現実と少し離れた色を用意します。
具体的にははじめから茶系を外し、水色やピンクでもいいよ、と伝えます。
木ができたら道、家、公園、川、海、山、お母さんや家族につながっていきます。
年齢が幼い子ほど、うまく立体になることより、集中して「お話づくり」に発展してくれるよう指導したいものです。

親子造形ではおすすめのカリキュラムです。

高学年は表したいものが凝ってくるので、対応する指導者の技術力も必要となってきます。









予告で触れました、箱庭療法について少しお伝えします。

<箱庭療法について>

箱庭療法は1929年イギリスで発表され、心理学者の河合隼雄によって日本に導入され、以来普及しました。
もとは子ども用のセラピーとして使用されていました。
理由として、子どもや思春期の人間は複雑な概念や言語の構成が苦手であり
遊びや象徴的な表現の中で自己表現をする、非言語的な治療が有効だと考えられたからです。
具体的にはその名の通り、箱の中に自由に好きなものを選んで構成していきます。

私は10年ほど前にカウンセリング研修で、実際の治療室を見学した事があります。

小学校の教室くらいの部屋の中央に一畳大の砂の入った箱が設置され、四隅にたくさんの、さまざまな玩具が置かれていました。
河合は日本人が盆石や盆景に親しんできた歴史があること、非言語的なものを好む日本人の性質から、子どものみならず大人にも箱庭療法が有効であろうと直感したそうです。
またフロイトは「自由連想法」という治療を行なっています。

「気になる木」は造形活動で治療法ではありません。
子どもが八つ切り大の紙の上で、一本の木から次々と子ども自身のお話をつくり、展開して2時間3時間でも集中して遊ぶことに興味を覚えました。
そして終わった子は「あ~、すっきりした!」と言って帰る子が少なくありません。
子どもの中で清浄作用があるように感じます。

また親子造形では相互理解につながる、きっかけづくりになるよう、機会があるごとに実施しています。

<肯定感のある指導>

こうした活動はどうやって展開していくといいでしょう。

なにか、やり始めた子に
指導者「何を作っているの?」
子ども「車」
指導者「そうなの、車を作っているのね。」
オウム返しです。

何でもない事ですが、子どものしている事を否定はしていません。
大人でも同じく、自分の考えを否定するだろうと予測できる相手には話しにくいのではないでしょうか?
小さな事ですが、子ども自身が認められていると感じ、安心して打ち込める活動につながるように思います。

また研究会で「80点」の例でお話ししましたように、その子に応じた肯定感をもって会話をする事は言う迄もありません。

各教室で試して頂きたいカリキュラムとして紹介しました。

尚、「気になる木」はカワイ絵画造形教室と山本浩二氏の立体工作のカリキュラムを参考にさせていただいています。

参考資料:「カウンセリングの実際」河合隼雄著/誠信書房1970年発行)
(キッズクラフト・赤座雅子)




(報告・赤座雅子)